2017年3月28日火曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 7


伊東、宇佐美の周辺が連続して登場してから、今度は別の場が登場する。

 まずは歩いて来る農婦を正面から撮った画像。




 次いでこの農婦が去っていくところを後方から撮った画像。


この場所もなかなか見つからなかった場所だ。

ストリートビューで示すと下の場所になる。




  伊東方面から今度は下田の白浜へと一気に移る。その後しばらくバス内部のドラマが写し出され、それから内陸部の風景が出てくるが、ここはまだ何処だかわからない場所だ。
  次の場面で海に出てくる。




  ここをすでに明らかにしている人もいるので、知っている人も少なくないだろう。ここではストリートビュー上げるにとどめる。








 ここが終わると次はこの場面。例によって前からと後ろからのショットだ。










 下の写真に岬が写っているが、これをもとに探すと、下のストリートビューにたどり着く。






 この周辺の135号線には現在は長いトンネルが二つ作られて、曲がりくねった道路は廃道となっている。映画の撮影場所はそちらの廃道で撮られたもののようだ。映画は下田の外浦海岸から今度は宇佐美・網代間の崖上の道路に飛んできた。
 

2017年3月27日月曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 6

  網代の次なる場所はここになる。人力車に乗った人物が太鼓を叩きながらやってくるという奇妙なシーンだ。



 すでに下田を見限ったので、割と楽に見つかる。




 今度は宇佐美だ。中央の山の窪みが一致する。ただしこの辺りは道路が大幅に拡張sれているので、場所まで一致させるのは難しい。

 次の場所はここ。









場所は伊東の海岸線なのだが、道路が大幅に変わっているうえ建物が遮蔽物となって遠景が見えない場所が多いので、場所を特定するのは難しい。ここは当時はなかった道路だが遠景を見渡せる場所として示しただけの場所だ。

 次の場所も伊東だが細かい位置まではわからない。









 







次はここ。













 伊東側からみて宇佐美の手前辺りと思われる。これも細かい位置まではわからず、大まかな場所が示せるだけだ。


映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 5

バスの待合所の最後の場面は、乗り遅れた乗客が坂道を走ってバスを追うという前回の画像で終わり。その後道路沿いの家並を走りながら写すというシーンが2か所続く。この二つの場所はまだ特定できていない。


 その次に出てくる場所がこれだ。

  これは下田。下田-稲取-下田と忙しい。観る者はバスの待合所を下田だと思うだろうが、そうはいかなかった。
 



 この場面では映画は右から左へ移動する。これは本来の下田街道が内陸部へと向かうのと逆行するコースで、海側へと向かう。かくしてしばらくは海岸線のシーンが多く登場する。

 この映像の直後はこうなる。



  ここもどこだか分らなかった場所だ。下田湾を探したが、似たような場所はあっても、細部で異なっていたりした。
 この問題に決着がついたのは、稲取を撮影に使ったと知ってからで、下田や下田街道への執着が消えてからだった。ストリートビューでみるとここになる。





  なんとまあ、今度は網代ときた。ちょうどトラックの上に見える対岸の山並みが映画のそれと一致している。映画を撮った場所は現在の国道だろうと思うが、現在の国道沿いは建物が多く、対岸を見渡せないので、この場所からの画像を使った。ちなみに対岸を見ると、当時対岸に建物のようなものが見えない。稲取とは異なって、網代は鄙びた漁村といっていい場所だったのかもしれない。ということは鉄道の恩恵を強く受けた地域だったのだろう。






2017年3月26日日曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 4


本編に入ろう。

 本編に入るとまず固定カメラによる撮影箇所が二か所現れる。













 この固定カメラによる映像は下田であることは間違いないところだろうが、場所をはっきりと特定することは難しい。

 

固定カメラによる下田の映像を2か所出した後、バスの待合所のシーンになる。
下の画像が最初に写し出される場所で、わかりにくいが下り坂の途中にバスが停車している。この辺りに待合所がある。差の先に海が見え、対岸の山の稜線を見ることができる。 



 待合所周辺を撮った映画の最後のシーンは上の場所とは反対方向にカメラを向けている。やはり坂道になっているのがわかる。




 

下の場面ではバスの停車位置、少し距離を置いた位置に三人の女、その先に対岸の様子がおぼろげながら写される。バスの横が待合所になる。




  
女三人をクローズアップした場面で対岸に横たわる山の稜線がさらにはっきりしてくる。






待合所内部からバスの停車している坂道側を写した映像。坂道を挟んだ反対側に石垣が見える。




 以上が待合所の場所を特定するための情報だ。これらをもとに下田市街地をストリートビューで探したが全く該当する場所がなかった。そもそも下田の市街地に坂道がない、坂道が出てくるのは市街地を外れて建物がまばらな場所ばかりで、しかも海が見えない。下田周辺まで範囲を拡げたが、該当するような場所が見当たらなかった。かくしてここでロケ地探しは挫けた。

 数か月後何度目かの再検討をしてみた。対岸の山並みは下田湾の対岸に見えるそれとよく似ているが、下田湾にしては、映画の湾は狭すぎるのではないか。そう考えて、湾の狭い場所を探してみた。

 そうすると、意外なほどあっさりとその場所を見つけた。それがここだ。 最初の下り坂を写した画像の場所だ。





 場所は下田から遠く離れた伊豆東海岸の稲取だった!

残念ながらストリートビューはこの道には入っていかないので、現在の様子はこれ以上わからないが、この先の通りは入っているので、それを見てみよう。





  
 女三人組でみた対岸の稜線と一致し、湾の広さも同じ規模だ。またストリートビューを操作して背後を見ると、待合所内部から外を写した画像に見られた石垣が現存しているのがわかる。

  撮影当時の稲取はこれほどにぎやかなのだろうか、とふと考えて調べてみた。今は温泉で有名だが、温泉が出たのは戦後のことで、伊豆急の鉄道が通ったのも戦後のことだった。
 古い絵葉書を検索してみると、映画が撮られたころに近い画像が見つかる。それをみるとそこそこ賑わいのありそうな場所のようだった。しかも映画に出てくる山の稜線も確認できる。


《追記》
稲取のストリートビューは2107年12月のものに更新されて、より新しい状態がわかるようになったものの、以前の2014年にはあった石垣と建物がなくなり、駐車場になってしまったようだ。この石垣は映画の撮影場所を特定するうえで重要な存在であったので、この場所については2014年のストリートビューを見てほしい。左上にGooglemapでみるをクリックして、Googlemapに行くと、左上に「ストリートビュー 月と年月が出るので、それをクリックして、2014年の画像が出る。ただし通りの様子は2017年版の方がわかりやすくなっている。


映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 3


  最初の場所で時間がかかったが、次に進もう。
 
 最初の場面が終わると今度は人物を追い越し、次いでその人物を正面からとらえていくシーンが連続する。追い越しとその後にシーンの間に、主人公のバス運転手上原謙が道を譲ってくれたお礼に「ありがとうー」と一言声をかける場面がそれぞれ出てくる。「だから彼を有りがたうさんと云う」とサイレント映画風の解説文が現れたところで導入部が終わる。声をかけていく場所は4つあるが、残念ながら場所の特定には至っていない。似たような場所はあるのだが決め手に欠ける。

 人物の次は鶏を蹴散らすシーンになる。ここでは「ありがとーと声をかける場面はない。この場所は映画の中で村の娘にレコードを頼まれる場面があるが、そこと同じ場所なのでそちらで扱おう。



 
 この次が導入部最後の場所になる。バスが家並を抜けて海に向かうシーンだ。




 この場所も見つけるのに苦労した場所だ。全く意外な場所だった。

 ストリートビューで見るとここだ。


           


 下田街道に縁のない伊豆多賀だ。かつて海だった場所は埋め立てられて、海浜公園になっている。埋立てられたのはそう古い話ではなく、自身埋立て前の風景を何度か見ている。砂浜があって海水浴場になっていたと思う。次第に砂浜が後退していったように記憶している。
 映画の画像では右側に石垣が見られるが、この石垣は現在も変わっていないようだ。赤い車の止まっている場所はコンクリートで補修しているが、他は当時のものに見える。



2017年3月14日火曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 2

さてそれでは続きを。


前回は二人連れのシーンで、二人が歩いている場所を見ておこう。 前方に見える山の稜線が場所を特定する手掛かりとなる。










  




















この場所をストリートビューで示すとこのようになる。









   道路が大きく拡幅され、現在の舗装路とはまるで感じが違う。しかし地図や新旧の航空写真を使って割り出すとここになる。


 さて、それではバスが転落しそうになる場所はどこかというと、下のストリートビュー示した場所だと思う。
 これまたえーっとなりそうな場所だ。道路は大幅に拡幅されカーブもより緩やかになっている。
 左の方向へ進めば映画で薪を満載した馬車が下っていく道と同じ場所だ。生い茂った木々が視界を妨げて当時の風景をみることはできない。それでも拡幅されとはいえ道路の位置自体は当時とほぼ変わらない。場所によっては大きく変更された箇所も少なくないが、ここは基本的に一緒だ。






 さてもう一つ映画から。




 






 この場所を初めて見た時、こんな場所は伊豆にはないと思った。どこか別の場所の滝を持ってきたのだろうと考えていた。だが違った。伊豆だった。
 この映像では進行方向とは逆にカメラを動かして、終わりに山林に開かれた開拓地をとらえている。この場所は地図を見ているだけではわからないのだが、航空写真を見るとはっきりと出てくる。古い航空写真である必要もなく、Goglemapの航空写真でもわかる。この航空写真を見ると滝と大きく湾曲した川、そしてこの開拓地の位置関係がわかる。そうするとこの滝の名がわかる。この滝は河津七滝の一つ初景滝で川は当然河津川だ。



初景滝は画像検索すると多くの写真を見ることができるが、ここではこれで確認しよう。
  吉名小百合版『伊豆の踊子』(1963年)の一場面が、この滝を使って撮られている。





 そうするとこの風景を撮った場所がわかってくる。映画の最初に出てくる場所から見渡せる道路の終わりまでの間にその撮影位置がある。ここだとはっきり場所を示すことはできないが、大まかな位置は地図から推測できる。
 当初この場所がわからなかったのは現在ここを通っても滝を見ることはできないからだ。かつてはこんな風景が下田街道を通る者の目に入ったのだと思う。

 さてもう一度バスが崖下に転落しかける場面に戻ろう。




 ここもどこだがわからなかったが、左下の農地が、例の開拓地だろう。下田街道から河津川の間に画像のような小山は存在しない。だから向こうに見える谷は別の川で、荻野入川で、手前にあるはずの河津川は写っていないことになる。カメラは直下を撮ったわけではなく、遠方に向けられていたのだろう。
 こうして転落しかける場面を撮った場所がストリートビューで見たカーブだと推測できるだろう。 


《追記》
 ストリートビューが更新されて2018年1月のものに変わった。前回のストリートビューは天気が悪く、遠景が霧に隠れて見えないばかりか、生い茂った木々に邪魔されて位置の確認に難儀したが、今回は冬の晴天で大変見通しがよくなった。この更新に合わせて一部書き直すことににした。