2020年9月10日木曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 14

 河津橋を渡るとバスは湯ケ野へ到着し、映画のうえではここで休憩となるのだが、現在の湯ケ野と当時のそれとではまるで別世界で、道路は大幅に拡張され当時の建物も残っていない。だから休憩中のバスの中から見える建物は湯ケ野のそれであるかどうかもわからない。ここまでくると、郷土資料館や役場、図書館等を使って調べないと打つ手がない。こういう場合は古い絵葉書などに当時の家並が写っていればよいのだが、ネット上では、湯ケ野の街道沿いの建物が写っている画像については見当たらない。1954年公開の美空ひばり版『伊豆の踊子』には当時の未舗装の街道に沿って立つ建物がちらっと写るのだが、『有りがたうさん』と一致する建物は見つからない。

 この湯ケ野の位置は、他の人の手によって明らかになっているのでダブる形になるが、そこをみてみよう。
黄色い円の擁壁部分が現在も残っている。







 ストリートビュー でみるとこの辺りだろうか。道路が大幅に拡幅され、河津川方面の建物が軒並み消えてしまっているので、正確な位置はわからない。






 次の場面はバス後方の窓からクルマが追い付いてくるところ撮った場面。



































 山の稜線が一致するので、この辺りかとはおもうのだが、見ての通り道路沿いは別の世界と化しているので正確な場所はわからない。





 次のシーンは後続のクルマに道を譲った後、バスが走り出した場面。バスはすでに上で見た擁壁の前を走っている。バスの左側に建物があるのだが、これはすでになく、現在の湯ケ野入り口かその脇辺りにあったものと思われる。
 手前の右側には水がしたたり落ちる樽が見えている。


































 ストリートビューでみるとこの辺りなのだが、あえて右側にある水路に焦点をあててみた。この水路の水が、樽の中に引き込まれていたのだろうと考えられる。








 湯ケ野からの坂道をバスは登っていく。映画で見ると緩やかな上り坂に見えるが、実際は結構勾配のある坂道だ。ここはカメラが前進しながら風景をとらえていく。ここはポイントが多いので、二つ画像をあげる。





































 下の写真右側に稲葉醫院と書かれた看板が見える。ここに脇道があって、その坂道を上がると稲葉医院があったらしい。この医院は10年近く前までは開業していたがいまはもうなくった。
 看板の向こう側には階段が見えるが、この階段はコンクリートに姿を変えて現存している。左側の建物は道路の拡幅などで今はない。右側の建物は外装は異なるが、骨組みは当時のもののようにも見える。




以上は下のストリートビューでチェックできる。






 次に出てくる場所がここ。車に積んだカメラで左側の風景を写していく。このシーンの直後に出てくる場所を考えると、稲葉医院の少し先、左側の開けた場所から撮った風景だ、とずっと思っていたのだがそこではなかった。下田と思わせて稲取、と同じやり方だった。この場所についてはもう少し先へ進んだ場所だとわかっているので、そちらで見ることにしよう。


































 次の場所はここ。右側に古い建物が見える。廃屋のようにも見えるが、定かではない。
 初めて自分で車を運転してこの辺りを通ったのは1990年代前半の頃で、湯ケ野はまだ道路の拡幅前で、河津川側にも建物が並んでいた。その拡幅前、湯ケ野の手前に道路沿いの廃屋があったのを覚えている。目立つ位置にあったのでよく覚えているのだが、拡幅後に通ってみるとこの廃屋がなくなっていた。その後、廃屋のあったと思われる場所に、奥行きのあまりない更地が残されていた。不動産の所有者の問題とか、収用上の問題とかいろいろとあったのかもしれない。






























右側の物置が置かれている部分が建物のあった場所と思われる。ストリートビューは2012年まで遡ることができるので、物置設置前の状態を見られる。