2023年1月7日土曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 21

  次は橋を渡る場面。この橋は嵯峨沢橋かどうかはっきりしないと別のところで書いたが、よく見ると橋を渡るところで、背後の山が見えた。ストリートビューで照合すると、この橋は古い嵯峨沢橋で正しいと思う。































 




 次は『東京女歌舞伎一座』に出くわす場所。ここも今のところはっきりしない場所だ。



















 










 これに続く場所も不明だ。一番下の場所は奥の道路脇にのぼりが見えるので、そこが上の3枚の場所だろうと思われる。一番下の写真では左側に建物があるが、外壁部分の白く写っている場所には澤病院と書かかれている。古写真の検索をかけると澤病院手術室(沼津)という古い絵葉書が出てくるので、この看板の澤病院かもしれない。








いよいよ折り返しに近づき、日が傾く。





 ストリートビューではこの直線道路だろうか。新しいものだと標識が邪魔になってくる。

 


 残りの場所は他で触れているが、それ以外はいまだ判明していない。ちょっとした長旅になってしまったが、『有りがたうさん』のロケ地探しは一応終わり。新たに分かった場所があれば、加筆するか、新たに書き起こすかということにして、ここで終わりということで。
 






2023年1月6日金曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 20

 

  次がこの場所になる。中央の川は狩野川の源流、本谷川。これより上流には浄蓮の滝がある、ちなみに左側が上流になる。この辺りは東京電力湯ヶ島発電所がある場所で、水力発電がおこなわれている。稼働は昭和5年からで、この映画を撮影している頃は、新しい発電所だったということになるが、どこが発電所の建物なのかはわからない。現在の発電所の建物は写真には写らない左側の奥にある。浄蓮の滝上流には、発電所向けの取水施設があることから、浄蓮の滝は本来の水量ではないという話を聞いたことがある。






 黄色で囲った特徴的な区画がある。これはストリートビューで見るより地図で見たほうがわかりやすい。戦前からの区画が変わらず残っているようだ。国道414号線をバスに乗って修善寺方面へ向かったことがあるが、この辺りは樹木で川の方は見えないうえに、バスの速度がまるで違ったあっという間に通り過ぎてしまうような感じだ。


 



 次の場所は車がエンコする場面。停止位置をずらしている可能性もある。




 




























 遠景からすると下の写真の場所をストリートビューで見るとこの辺りか。上の場所はもう少し河津側といったところか。写真を見れば、現在と違って道路は曲がりくねって、擁壁もないような整備の進んでいない状態なので、確定するのには難しい。ストリートビューは2018年1月のものを張り付けているが、変わってしまうことが大いにあるので、その場合は2018年のものでみるとわかりやすいかもしれない。車線がどちらかでも風景は変わってくる。






 





この後連続して乗客が下りていく。

最初に降りた乗客。湯ヶ島に入るあたりのようにも見えるが、背後の山並み、石垣から見える坂の傾斜具合がなんとも微妙で、場所が特定できない。


















 











 次の二人は別々に降りたようにみせているが、実際は同じ場所で降りている。日が差す方向が逆で時間が大きく異なっているのがわかる。なぜこういう撮り方をしたか不明だが、理由を考えるのも面白い。































 ストリートビューでみるとこの辺りが有力だが、まだ撮られていない旧道風の道路もあるので断定はできない。また、ここだけの話ではないが、古い道路と整備された現代の道路を比較すると、曲がり具合が変わったりしており、その場合カメラの向き自体が変わってしまうため、位置関係を判断するのが難しくなってしまうということも起こる。


2023年1月5日木曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 19

 バスは出演者を乗せてトンネルを抜ける。トンネルを出る場面からフィルムは切れることなく映画は進行していく。

 上の画像では黄色い楕円の中にまっすぐ伸びた太い木、下の画像では傾いた木が写っている。




















 ここをストリートビューで見ると、江藤延男追慕の碑の背後にかなり大きな樅らしき木が見える。また少し行ったところに傾いた木もみえる。どうもこの二つの木は現在も残っているらしい。





 次の出てくる場所は左側に下るカーブ。この場所はいったいどこかまったくわからなかった。


























 しかし前々回の風まかせ: 映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探しを書いていて思いついた場所がある。国土交通省の1948年の航空写真(国土交通省 USA-M910-33)の左側の円で示した場所だ。つづら折れの坂道の折り返しポイントで、ここは湯ヶ島側からループ橋への進入路の最初の橋脚がある場所で、その辺りのからの景色がストリートビューでみられる。見る位置の高さがかなり異なるので、断言するには微妙だが、らしくは見えないこともないと思う。


 







 バスは進み次の場所に至る。ここはカラー化画像で見てみよう。猟銃らしきものを持ったハンター風の人物をバスに乗せる場面だ。




















 








 この先道路は左へと進み、橋を超えることになる。湯ヶ島方面から延びる天城街道は、深い谷に阻まれ、谷の浅いここまで迂回することによって、狩野川の源流筋である本谷川を渡ることができるようなる。
 背後に今はない建物が見える。茶屋があったのかもしれない。

 




 次は気分を害してバスを降りてしまった髭男が街道を歩くシーン。


















 











 さすがにこれだけでは情報が少ないが、道路の両側が上りの斜面になっており、道が長い直線で奥がやや右に流れていく。そんな場所であることを考えると、この辺かなという感じ。

 



次の場面は以前触れた所。ここはカラー化画像で見てみよう。









今は集落はなくなってしまい、人は住んでいない場所だが、野畔という名のバス停が残っている。

下はドライブレコーダーによる現代の映像。



















 下の二つの場所はすでに別のところで触れた。三番目は具体的にどこかというと難しいが、背後の特徴的な山が一致するので、どこかこの辺りだろう。







 
















































































2023年1月3日火曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 18

 


 次の場面は歩く人物の姿。下の写真『伊豆の踊子』のカラー化画像からみると、黄色い丸で示した辺りを撮ったものか。背景の山の形が一致するが、『有りがたうさん』では右側の山が木立の分を考慮しても切れているように見えることからこの辺りではと思える。どちらも先まで続く道路が右側に消えていくように見えるので、大きくカーブしているらしく、現在飲食店があるあたりかもしれない。






 





 この後の修行僧の出てくる場所についてはわからない。その後バス車内の映像が長く続く。そうしてようやくわかる場所に至る。他の人も指摘しているように寒天橋だ。寒天橋は現在もあるが、当時のものとは異なっている。



この場面で以前から注目していたのは、中央部に立っている木だ。


















 上部は完全に朽ちてしまっているが、根の部分はまだ残っていた。下の岩などは押し流されてしまっているようだ。


    






 この後に出てくる朝鮮からの出稼ぎ工夫の集団が歩く道もわからない。どうも現在の旧道のようでもあるが、当時はなかっただろう擁壁や遠景を覆いつくしてしまう樹木の繁茂で判別がつかない。


 ようやく天城隧道に至って場所が判明することになる。























 ストリートビューと照合すると、この個所の石垣は変わっていないようだ。ストリートビューは2018年の方がわかりやすい。



 





 下の場所は現在では旧天城トンネル 南口園地と称される場所。山の稜線がわずかに一致するのみで、景色は大きく変わっている。樹木の成長と繁茂がその原因だ。






 




















































次の場面はここ。現地で撮った写真が下。これしかないという岩。他に腰を下ろせるような場所は見当たらない。


























































 そして天城隧道最後の名場面。カラー化すると秋の季節感がよく出て美しい。
































こちらは現在。右側に見える木の太さがまるで違う。まさに年輪を重ねた太さだ。杉と思っていたが、ヒノキも交じっているようだ。隧道自体の保守やら整備は進んでいるのだろうが、戦前と比べると、樹木が鬱陶しく感じられる。
 左側の崖は1978年の地震で一部崩落し工事が行われている。






































2023年1月2日月曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 17

 この先はわからない場所が多くなるほか、以前先に書いた場所と重複したりするので書きにくくて難渋している。ループ橋辺りは、映画に登場する旧道が失われていて、照合する作業が難しい。

 無賃乗車の子供たちが失敬と敬礼していく場面、浮浪者が街道をさまようシーンなどは場所がどこだかよくわからない。

 こうした場所が登場した後は、バスが崖から転落しそうになる場面になるが、これはすでにふれている

 その場所をモノクロ画像をカラー化できるサイトでカラーにした画像でみると以下のような場所になる。妙に幻想的な雰囲気を感じる。





























 映画の後半近く、逆方向から撮影された同じ場所の風景がこちら。









ストリートビューでみた現在の姿がこちらになる。木立が目隠しして遠景がみえないが、実際は壮大な風景が広がっている。



 




 実際に現地で見ると、現在の道路より下に平坦な場所がみられる。古い道路はもう少し下にあったようだ。




























 







 


 この先に登場する場所はすでにのところで触れているので、その先へと進むことにする。
 次に出てくるのがこのつづら折れの坂道。映画の進行と実際の場所が前後で逆になっている。この場所は1978年の伊豆大島近海地震地震よる崩落に見舞われて、現在は失われている。代わりにループ橋が作られることになった。ただし映画で登場するこの坂道は、実際の航空写真で見られる坂ではなさそうだ。



























 





 国土交通省の1948年の航空写真を見ると確かにつづら折れの道は見られるのだが、同じ場所ではなさそうで、どこか別の場所のようにも見える。該当するとすれば、左側の黄色い楕円の部分になるが、上の映画の場面では奥から大きく弧を描いて手前と道路が続いてくるが、航空写真からはそれを読み取れるようなカーブがみられない。また左奥の傾斜が急で崖のようになっているのもおかしく見える。というわけで上の場所は、航空写真にみられる場所ではないように思える。現地で照合しても、折り返してさほど進んでいない場所に、旧道のものと思われる古い石垣がみられたが、映画のシーンでは石垣がみられない。またカメラが高い位置に据えられているが、このような場所はあったのかという疑問もある。


国土交通省 USA-M910-33






























  









  ありがたいことにgogoleマップにループ橋周辺を撮ったドローン画像がアップされているので、それを見てみよう。マウスの左ボタンを押した状態で上下左右を自由に移動でき、ホイール回転で拡大・縮小できる。
 画面左側が修善寺・湯ヶ島方面、右側が河津・湯ケ野方面になる。湯ヶ島と湯ケ野は名前が似ていことから混同することがあるので注意が必要。








 湯ヶ島川から進んでループ橋への進入路の山側にコンクリートの擁壁が写っているが、これが旧道への道。廃道になっているので車は進入できない。
 最初の橋脚辺りが、上記国交省の航空写真(国土交通省 USA-M910-33)の左上の黄色い楕円で示した折り返し地点のようだ。下の写真はその場所で、奥が最初の橋脚。手前の橋脚の間に例の特徴的な形をした山が見える。






























 ドローン画像で、ここから右へ道路がのびているのが確認できるが、これが旧道で山側に古い石垣がみられる。


























































ドローン画像でループ橋を過ぎた地点あたりから、右へ上がる道が見えるが、これは新しく設けられた道で旧道ではない。比較的新しい砂利が敷かれて整備が進んでいる様子だ。
下の写真、左側がその道、奥の舗装道路はループ橋の一部。
上の段の奥にわかりにくいが古い建物が見える。ドローン画像でも白っぽく映っている。







 砂利の上り坂の起点辺りから撮った旧道。奥に橋脚が見える。旧道はこの砂利道の左側へ続いているはずだが、斜面と杉林に阻まれる。

























下の写真は上の段の旧道の景色。上が湯ヶ島方面、下が河津方面。古い旧道マニアのレポートではかなり荒れた様子だったが、現在は人の手が入っているようだ。





















 映画でのつづら折れの坂道の次の場面は下の場所になる。これは国土交通省の航空地図では右側の黄色い楕円の箇所になる。































 つづら折れの坂道を登りきったところから撮影された場面。カラー化するとよく晴れた美しい風景に見える。背後に特徴的な山頂部を持つ山が目立つ。上の写真もそうだが道路脇に石垣が見える。


































 こちらは同じ場所で撮影された美空ひばり主演の『伊豆の踊子』(1954年)。年代は異なるが、大きくは変わってはいないようだ。転落防止用のコンクリート塀が高くなっているが、工事したのか、あるいは堆積した土砂を取り除いただけかもしれない。








有りがたうさん 1936年


伊豆の踊子 1954年





バスを見送る二人連れと走り去るバス。