2017年8月22日火曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 9

次はこの場面になる。














 


















この辺りはだいぶ様子が変わっているので、正確な位置まではわからないが、だいたいこの辺り、ということでストリービューを見てみよう。
 例によってストリートビューの広角レンズは遠景を小さく見せるので、マウスのホイールを操作して拡大してみれば、正面の山の稜線が樹木の状態でいくらか異なるが、ほぼ一致することがわかる。










カメラは先へ進み、次の場所を映し出す。石造の立派な建物の裏に道路が少し広くなった場所がある。


































































 この場所をストリートビューでみると下の辺りだと思われる。現在のバス停『原田口』がある場所だ。道路際の立派な石造の建物は今はなくなっている。代わりにレンガ風の建物ができて、商店となっている。この店にはレンタル空気入れというものがあるのがなんとも面白い。昔、映画の中で、自動車のタイヤにせっせと空気を入れる場面がすぐ近くで撮られていたということを知る人は、ほとんどいないのではなかろうか。
 さらに空気を入れている場所は現在の白浜観光協会の前というのも何かの縁かも知れない。













ここをもう少しみてみよう。


















中央付近の階段の位置が一致している。石垣上の建物は当然ながら全く変わっている。











 この後、カメラは後方を映した場面へと切り替わる。クルマの位置が大きく後退してしまっているのは、カーブがすぐに来てしまうので、何とかカメラを長くまわしたいということなのだろうことは、以前天城街道での二人連れを取る際にもあったことだ。(映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し1 )




















2017年6月30日金曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 8

 前回の場所から先は今のところ不明な場所が2カ所現れる。

















  上の二つの地点の後、下の場所が映し写し出される。切通しを抜けてくる車を後方へ向けたカメラでとらえるシーンだ。































この切通しの次に出てくる場所との関連を考慮すると下の場所が映画の場所のようだ。道路が大幅に拡張されていることもあって、ここだと言い切れる材料がないので断言はできないのだが、おそらく間違いないと思う。










上にも触れた次の場所が下の画像だ。後ろからやってきた乗用車がバスを強引に止めて追い抜いていくシーンで、固定カメラで撮られている。

 この場所が白浜であることは他のブログなどでも知られているところだが、ここではもう少し踏み込んで撮影地点を探してみよう。


































 バスが停車している場所を見ると、石積みの擁壁の上に道路があることがわかる。左側が低く、右側へ行くほど高くなっている。カメラは窪地を挟んだ位置に置かれ、この風景を撮っていることになる。

 ストリートビューでこの窪地と石積みを探してみても、それらしきものは見つからない。 
 新旧航空写真やら地図を眺めていると、事情が分かってきた。この窪地には水路があって、石積みの擁壁は橋となっていたのだと思う。Gogoleの地図にはこの水路がははっきり示されている。現在のこの場所は道路沿いの部分が暗渠化され、そこに建物が建っている。 道路からはわかりにくいが、水路は現存するわけだ。




 ストリートビューだとこの辺りの角度になるだろうか。水路のあった場所には白浜観光と書かれ建物があり、その脇近辺がカメラの据えられた場所だろう。











2017年3月28日火曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 7


伊東、宇佐美の周辺が連続して登場してから、今度は別の場が登場する。

 まずは歩いて来る農婦を正面から撮った画像。




 次いでこの農婦が去っていくところを後方から撮った画像。


この場所もなかなか見つからなかった場所だ。

ストリートビューで示すと下の場所になる。




  伊東方面から今度は下田の白浜へと一気に移る。その後しばらくバス内部のドラマが写し出され、それから内陸部の風景が出てくるが、ここはまだ何処だかわからない場所だ。
  次の場面で海に出てくる。




  ここをすでに明らかにしている人もいるので、知っている人も少なくないだろう。ここではストリートビュー上げるにとどめる。








 ここが終わると次はこの場面。例によって前からと後ろからのショットだ。










 下の写真に岬が写っているが、これをもとに探すと、下のストリートビューにたどり着く。






 この周辺の135号線には現在は長いトンネルが二つ作られて、曲がりくねった道路は廃道となっている。映画の撮影場所はそちらの廃道で撮られたもののようだ。映画は下田の外浦海岸から今度は宇佐美・網代間の崖上の道路に飛んできた。
 

2017年3月27日月曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 6

  網代の次なる場所はここになる。人力車に乗った人物が太鼓を叩きながらやってくるという奇妙なシーンだ。



 すでに下田を見限ったので、割と楽に見つかる。




 今度は宇佐美だ。中央の山の窪みが一致する。ただしこの辺りは道路が大幅に拡張sれているので、場所まで一致させるのは難しい。

 次の場所はここ。









場所は伊東の海岸線なのだが、道路が大幅に変わっているうえ建物が遮蔽物となって遠景が見えない場所が多いので、場所を特定するのは難しい。ここは当時はなかった道路だが遠景を見渡せる場所として示しただけの場所だ。

 次の場所も伊東だが細かい位置まではわからない。









 







次はここ。













 伊東側からみて宇佐美の手前辺りと思われる。これも細かい位置まではわからず、大まかな場所が示せるだけだ。


映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 5

バスの待合所の最後の場面は、乗り遅れた乗客が坂道を走ってバスを追うという前回の画像で終わり。その後道路沿いの家並を走りながら写すというシーンが2か所続く。この二つの場所はまだ特定できていない。


 その次に出てくる場所がこれだ。

  これは下田。下田-稲取-下田と忙しい。観る者はバスの待合所を下田だと思うだろうが、そうはいかなかった。
 



 この場面では映画は右から左へ移動する。これは本来の下田街道が内陸部へと向かうのと逆行するコースで、海側へと向かう。かくしてしばらくは海岸線のシーンが多く登場する。

 この映像の直後はこうなる。



  ここもどこだか分らなかった場所だ。下田湾を探したが、似たような場所はあっても、細部で異なっていたりした。
 この問題に決着がついたのは、稲取を撮影に使ったと知ってからで、下田や下田街道への執着が消えてからだった。ストリートビューでみるとここになる。





  なんとまあ、今度は網代ときた。ちょうどトラックの上に見える対岸の山並みが映画のそれと一致している。映画を撮った場所は現在の国道だろうと思うが、現在の国道沿いは建物が多く、対岸を見渡せないので、この場所からの画像を使った。ちなみに対岸を見ると、当時対岸に建物のようなものが見えない。稲取とは異なって、網代は鄙びた漁村といっていい場所だったのかもしれない。ということは鉄道の恩恵を強く受けた地域だったのだろう。






2017年3月26日日曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 4


本編に入ろう。

 本編に入るとまず固定カメラによる撮影箇所が二か所現れる。













 この固定カメラによる映像は下田であることは間違いないところだろうが、場所をはっきりと特定することは難しい。

 

固定カメラによる下田の映像を2か所出した後、バスの待合所のシーンになる。
下の画像が最初に写し出される場所で、わかりにくいが下り坂の途中にバスが停車している。この辺りに待合所がある。差の先に海が見え、対岸の山の稜線を見ることができる。 



 待合所周辺を撮った映画の最後のシーンは上の場所とは反対方向にカメラを向けている。やはり坂道になっているのがわかる。




 

下の場面ではバスの停車位置、少し距離を置いた位置に三人の女、その先に対岸の様子がおぼろげながら写される。バスの横が待合所になる。




  
女三人をクローズアップした場面で対岸に横たわる山の稜線がさらにはっきりしてくる。






待合所内部からバスの停車している坂道側を写した映像。坂道を挟んだ反対側に石垣が見える。




 以上が待合所の場所を特定するための情報だ。これらをもとに下田市街地をストリートビューで探したが全く該当する場所がなかった。そもそも下田の市街地に坂道がない、坂道が出てくるのは市街地を外れて建物がまばらな場所ばかりで、しかも海が見えない。下田周辺まで範囲を拡げたが、該当するような場所が見当たらなかった。かくしてここでロケ地探しは挫けた。

 数か月後何度目かの再検討をしてみた。対岸の山並みは下田湾の対岸に見えるそれとよく似ているが、下田湾にしては、映画の湾は狭すぎるのではないか。そう考えて、湾の狭い場所を探してみた。

 そうすると、意外なほどあっさりとその場所を見つけた。それがここだ。 最初の下り坂を写した画像の場所だ。





 場所は下田から遠く離れた伊豆東海岸の稲取だった!

残念ながらストリートビューはこの道には入っていかないので、現在の様子はこれ以上わからないが、この先の通りは入っているので、それを見てみよう。





  
 女三人組でみた対岸の稜線と一致し、湾の広さも同じ規模だ。またストリートビューを操作して背後を見ると、待合所内部から外を写した画像に見られた石垣が現存しているのがわかる。

  撮影当時の稲取はこれほどにぎやかなのだろうか、とふと考えて調べてみた。今は温泉で有名だが、温泉が出たのは戦後のことで、伊豆急の鉄道が通ったのも戦後のことだった。
 古い絵葉書を検索してみると、映画が撮られたころに近い画像が見つかる。それをみるとそこそこ賑わいのありそうな場所のようだった。しかも映画に出てくる山の稜線も確認できる。


《追記》
稲取のストリートビューは2107年12月のものに更新されて、より新しい状態がわかるようになったものの、以前の2014年にはあった石垣と建物がなくなり、駐車場になってしまったようだ。この石垣は映画の撮影場所を特定するうえで重要な存在であったので、この場所については2014年のストリートビューを見てほしい。左上にGooglemapでみるをクリックして、Googlemapに行くと、左上に「ストリートビュー 月と年月が出るので、それをクリックして、2014年の画像が出る。ただし通りの様子は2017年版の方がわかりやすくなっている。


映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 3


  最初の場所で時間がかかったが、次に進もう。
 
 最初の場面が終わると今度は人物を追い越し、次いでその人物を正面からとらえていくシーンが連続する。追い越しとその後にシーンの間に、主人公のバス運転手上原謙が道を譲ってくれたお礼に「ありがとうー」と一言声をかける場面がそれぞれ出てくる。「だから彼を有りがたうさんと云う」とサイレント映画風の解説文が現れたところで導入部が終わる。声をかけていく場所は4つあるが、残念ながら場所の特定には至っていない。似たような場所はあるのだが決め手に欠ける。

 人物の次は鶏を蹴散らすシーンになる。ここでは「ありがとーと声をかける場面はない。この場所は映画の中で村の娘にレコードを頼まれる場面があるが、そこと同じ場所なのでそちらで扱おう。



 
 この次が導入部最後の場所になる。バスが家並を抜けて海に向かうシーンだ。




 この場所も見つけるのに苦労した場所だ。全く意外な場所だった。

 ストリートビューで見るとここだ。


           


 下田街道に縁のない伊豆多賀だ。かつて海だった場所は埋め立てられて、海浜公園になっている。埋立てられたのはそう古い話ではなく、自身埋立て前の風景を何度か見ている。砂浜があって海水浴場になっていたと思う。次第に砂浜が後退していったように記憶している。
 映画の画像では右側に石垣が見られるが、この石垣は現在も変わっていないようだ。赤い車の止まっている場所はコンクリートで補修しているが、他は当時のものに見える。



2017年3月14日火曜日

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 2

さてそれでは続きを。


前回は二人連れのシーンで、二人が歩いている場所を見ておこう。 前方に見える山の稜線が場所を特定する手掛かりとなる。










  




















この場所をストリートビューで示すとこのようになる。









   道路が大きく拡幅され、現在の舗装路とはまるで感じが違う。しかし地図や新旧の航空写真を使って割り出すとここになる。


 さて、それではバスが転落しそうになる場所はどこかというと、下のストリートビュー示した場所だと思う。
 これまたえーっとなりそうな場所だ。道路は大幅に拡幅されカーブもより緩やかになっている。
 左の方向へ進めば映画で薪を満載した馬車が下っていく道と同じ場所だ。生い茂った木々が視界を妨げて当時の風景をみることはできない。それでも拡幅されとはいえ道路の位置自体は当時とほぼ変わらない。場所によっては大きく変更された箇所も少なくないが、ここは基本的に一緒だ。






 さてもう一つ映画から。




 






 この場所を初めて見た時、こんな場所は伊豆にはないと思った。どこか別の場所の滝を持ってきたのだろうと考えていた。だが違った。伊豆だった。
 この映像では進行方向とは逆にカメラを動かして、終わりに山林に開かれた開拓地をとらえている。この場所は地図を見ているだけではわからないのだが、航空写真を見るとはっきりと出てくる。古い航空写真である必要もなく、Goglemapの航空写真でもわかる。この航空写真を見ると滝と大きく湾曲した川、そしてこの開拓地の位置関係がわかる。そうするとこの滝の名がわかる。この滝は河津七滝の一つ初景滝で川は当然河津川だ。



初景滝は画像検索すると多くの写真を見ることができるが、ここではこれで確認しよう。
  吉名小百合版『伊豆の踊子』(1963年)の一場面が、この滝を使って撮られている。





 そうするとこの風景を撮った場所がわかってくる。映画の最初に出てくる場所から見渡せる道路の終わりまでの間にその撮影位置がある。ここだとはっきり場所を示すことはできないが、大まかな位置は地図から推測できる。
 当初この場所がわからなかったのは現在ここを通っても滝を見ることはできないからだ。かつてはこんな風景が下田街道を通る者の目に入ったのだと思う。

 さてもう一度バスが崖下に転落しかける場面に戻ろう。




 ここもどこだがわからなかったが、左下の農地が、例の開拓地だろう。下田街道から河津川の間に画像のような小山は存在しない。だから向こうに見える谷は別の川で、荻野入川で、手前にあるはずの河津川は写っていないことになる。カメラは直下を撮ったわけではなく、遠方に向けられていたのだろう。
 こうして転落しかける場面を撮った場所がストリートビューで見たカーブだと推測できるだろう。 


《追記》
 ストリートビューが更新されて2018年1月のものに変わった。前回のストリートビューは天気が悪く、遠景が霧に隠れて見えないばかりか、生い茂った木々に邪魔されて位置の確認に難儀したが、今回は冬の晴天で大変見通しがよくなった。この更新に合わせて一部書き直すことににした。


2017年2月5日日曜日

伊豆 下田街道旧道

 最近は行かなくなった、というより行けなくなってしまったが、伊豆にはよく渓流釣りに出かけた。渓流に何度か足を運んでいるうちに、目前に広がる渓流の美しさを写真にしておきたいと思うようになった。まだフィルムの時代で、撮ってはみるもののピンボケ写真を連発、フィルム代、現像料と金がかかることもあって、いつしかカメラを持っていくこともなくなった。
 長い中断を経て再び渓流に戻ると懐にはコンパクトデジタルカメラを忍ばせた。だが次第に画質を求めるようになって、カメラも大型化していくことになった。

 この写真は下田街道旧道にある川端康成文学碑。写真の左側の崖下に本谷川(狩野川の源流)が流れている。一帯は水生地と呼ばれている場所だと思うが、地図があって場所がしめされているわけではないのではっきりとはわからない。
 
下田街道旧道 

映画『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探し 1

 

 今回は清水宏『有りがたうさん』(1936年)のロケ地探しにしよう。今回は、といっても一度では済まないので、何回かに分けるしかない。しかもあと何回で終わるかなどはまだわからない。そもそもこの映画は、いわゆるロードムービーというやつで、走るバスの中が舞台であって、長い路線上の多くの場所が映し出される。だから登場する場所は多いうえに、なおかつ離れているとくる。
 この映画では車中の俳優陣の映像と、固定カメラと移動するカメラから主に風景を撮った映像があり、ここで扱うのは後の二つになる。というのも移動するバスの車窓に風景は映し出されるのだが、カメラの焦点は演技者に充てられているためにピントが合っておらず判別が難しいうえに、ドラマの間に挿入される風景のみを撮った映像と場所が違っていたりするからだ。


 この映画には導入部というべきものがあって、その最後にサイレント映画風の解説が現れる。最初の場面からここまでが導入部で、いくつかの場所がランダムに現れることになる。

 最初の 記念すべき?場面がこの場所だ。


 


 
 この場所を気に入ったのか、他にもここで撮られたシーンがある。映画の中で、バスが崖下に転落しかける場面があるが、それがここでもある。下の場所はその場所から立ち去る際の固定カメラの映像だ。カメラの位置が異なるが、映し出され風景は同じだ。日の差す方向が異なるほか、崖側に置かれているものも異なるようで、 別の日に撮られたものかもしれない。





 この場所を撮ったのはこれだけではなく、映画のほぼ終わり付近でも、ここが映し出される。今度は逆方向から走行する車を使って撮影されている。この映像で、この場所の様子がわかってくる。
 




 今では考えられないような風景が眼前に広がる。ここに映し出される映像は、かつてこの道を旅した多くの文人が見たものとほぼ同じものだろう。徳富蘇峰は対話形式をとりながら、この風景を讃えている。与謝野晶子は月夜の晩に車でこの道を通り、落ちないかとはらはらしたと述懐している。しかし、今この道を通るなら、徳富蘇峰も与謝野晶子も何言ってるの、ということになってしまうだろう。 大きな谷の景観も転落の危険も感じない道路へと変わっているからだ。かといってこの風景が失われたというわけではない。木々が成長して視界を遮っているから遠景を見渡せないのだ。この当時の視界の広がった風景は有料道路によくある○○スカイラインなどに見られたりする。伊豆スカイラインや西伊豆スカイラインにも視界が開け、遠景を見渡せる場所がいくつかある。そう考えると、当時のこの道路は現在のスカイラインのようなものなのかもしれない。

 この動画の終わり付近、荷馬車に積んでいるものをみれば、この当時の山が現代からすればはげ山なのが理解されるだろう。その積み荷は薪だ。単に建築用の資材を得るための伐採だけではなく、薪を取るために、あちこちの山がはげ山になっているのだ。昔話の冒頭によくある、おじいさんは山に柴刈りにという言葉が示すように、薪を取るという作業は昔の生活の主要な作業の一つとして重要だった。毎日の炊飯やら風呂焚きの燃料として欠くことにできないものだったのだから。ガスや灯油が燃料として使われるようになり、薪が必要でなくなったとき、山は緑に包まれろようになった。それもさほど遠くない時代の出来事だ。

 この映像の最後をみてみよう。





  こ場面では後方にしっかりと山の稜線が写し出されている。これが場所探しに手掛かりの一つになるのだが、残念ながらストリートビューでは天候が悪く、視界が遮られているので、それだけでは場所を特定できなかった。



 さて冒頭の画面に戻ろう。遠くへ延びる道路はやがて斜面の向こうへと消えていくのだが、その手前に橋のような構築物が見える。道路の補強らしい。『按摩と女』でみた「おかね道」の古い写真をさがしていたら、このような感じの補強をみた。ここもおそらくそうした補強なのだろう。
 このあたりでも別の撮影が行われている。ハイキングの男女二人連れを追い越す場面だ。


  当時の道路がどのような状態だったかがわかる。2度カットが入るが、これはオリジナルのカットでこちらのカットではない。
 このシーンでは面白いことが起こる。追い越すシーンと追い越した直後のシーンを見ると、二人のいる場所がおかしい。追いつかれた場所から大きく後退しているのだ。なぜ後退したかというと、すぐにカーブにさしかかってしまうので、追い越した場所から撮ろうとする俳優がカメラに収まる前にカーブには入ってしまうからだろう。それなら追い越す場面を取り直せばいいということにはならなかった。少しくらい下げても誰見気づかないだろうからこのまま行こうとなったのかもしれない。でもデジタル化された映像では簡単に見破られてしまう。

 この付近で撮られた映像は他にあるのだが、この辺で止めておこう。
  
続く




2017年2月4日土曜日

一枚の写真 映画『有りがたううさん』の一場面から 2

 分岐点を右へ行くと当時の新道となり、現在の国道に合流することになる。映画当時はまだ浄蓮滝駐車場へ直進する道路はなく、天城隧道方面からくると右に大きく曲がっていった。

 下の場面はお通夜へ行くためにバスを止める乗客だ。この客が乗ってきたために、祝言のためにバスへ乗った二人連れが縁起が悪いとバスを降りる。それが前回の場所だ。



 

ストリートビューで見ると、この辺り。決め手は左側にある石像群ということになる。







映画の進行とは逆に行っているが、祝言のために乗り込んだ二人連れがバスを止めたのが下の場所だ。この場所はなかなかわからなかった。当初の予想では前回触れた旧道ではないかと思っていた。ストリートビューで見るとわかるのだが、ここと似た場所があったりする。しかしよく見るとどうも違うということになった。
 
































 それではどこか。古い航空写真などを参考にしながら割り出したストリービューの位置は以下の場所だった。現在は人家はないが、古い航空写真には数件の建物があったことが確認できる。







一枚の写真 映画『有りがたううさん』の一場面から

一枚の写真をまずあげておこう。



この写真は伊豆の踊子歩道の一部に指定されている道路で、浄蓮の滝駐車場から国道を渡って脇道に入っていくとこの場所に至る。詳しくは後でストリートビューを出しておくので、そちらで確認できる。この写真を撮ったころは、まだストリートビューはこの道路には入っておらず、この道が『有りがたうさん』の撮影に使われた道路なのか定かではなかった。それ故に、釣りのついでに行ってみて、写真を撮っておこうということになった。
 さて映画『有りがたうさん』 (1936年)は清水宏監督の以前取り上げた『按摩と女』に先立って公開された映画で、伊豆をロケに使っている。いわゆるロードムービーというやつで、路線のあちこちで撮るものだから非常に広範囲でかつ取られる場所も格段に多くなる。
 この映画を初めて見たとき、いくつかはすぐにあの場所だとわかった。そうなると、他の場所はどこなのか興味が湧いてくる。ストリートビューがまだ伊豆に入っていない頃なので。実際に行ってみないとわからない状態だった。あの辺りかなと思っても、実際に現地で確認しないと何ともいえないかった。そこで現地に行って撮ったのがこの写真だが、実のところ偶然写っていたというにすぎない。この道路が旧道だと知って、とりあえずは写真を撮ったというところだ。

 さて映画の一場面をみてみよう。
 映画では天城隧道を超えると、途端にバスの乗客の入れ替わりが激しくなってくる。この場面は祝言に行くためにバスに乗った夫婦が新たにお通夜に行くためにバスに乗り込んできた客と一緒に行くのは縁起が悪いとバスを降りたところだ。
 

  レンズの違いで遠近感が違うが、それを承知でよく見比べてみると、背景の山の形が同じだ。映画の方は右側に少しとがった場所が見えるが、これは成長した気に隠れているだけで、ストリートビューで、この場所から前進して眺めてみれば同じだとわかる。
 上の写真では道路の右側にガードレールが見えるがここに落差のある水路があるために、転落防止用に設けられたもののだろう。水路は道路に沿って作られており、映画に見られる水車はこの水路を使ったものだ。

 さていよいよストリートビューだ。






 この道路を進んでいくとやがて分岐に差し掛かる。直進する道路は細くなっており、こちらが踊子歩道とされいている。というのもこちらが旧道で、島崎藤村の文学碑があったりする。右側は映画撮影当時にはすでにできていた当時の新道になる。それを知らず、旧道が当時の撮影に使われたのではないかとトコトコと旧道を歩いて行った。雰囲気はいかにもという感じで、ここで撮られたのではと推測してみたりしたが外れた。

 映画はここを右折してすぐの場所でも撮影されているのだが、長くなるのでここでやめておこう。
 
続く