この写真は伊豆の踊子歩道の一部に指定されている道路で、浄蓮の滝駐車場から国道を渡って脇道に入っていくとこの場所に至る。詳しくは後でストリートビューを出しておくので、そちらで確認できる。この写真を撮ったころは、まだストリートビューはこの道路には入っておらず、この道が『有りがたうさん』の撮影に使われた道路なのか定かではなかった。それ故に、釣りのついでに行ってみて、写真を撮っておこうということになった。
さて映画『有りがたうさん』 (1936年)は清水宏監督の以前取り上げた『按摩と女』に先立って公開された映画で、伊豆をロケに使っている。いわゆるロードムービーというやつで、路線のあちこちで撮るものだから非常に広範囲でかつ取られる場所も格段に多くなる。
この映画を初めて見たとき、いくつかはすぐにあの場所だとわかった。そうなると、他の場所はどこなのか興味が湧いてくる。ストリートビューがまだ伊豆に入っていない頃なので。実際に行ってみないとわからない状態だった。あの辺りかなと思っても、実際に現地で確認しないと何ともいえないかった。そこで現地に行って撮ったのがこの写真だが、実のところ偶然写っていたというにすぎない。この道路が旧道だと知って、とりあえずは写真を撮ったというところだ。
さて映画の一場面をみてみよう。
映画では天城隧道を超えると、途端にバスの乗客の入れ替わりが激しくなってくる。この場面は祝言に行くためにバスに乗った夫婦が新たにお通夜に行くためにバスに乗り込んできた客と一緒に行くのは縁起が悪いとバスを降りたところだ。
レンズの違いで遠近感が違うが、それを承知でよく見比べてみると、背景の山の形が同じだ。映画の方は右側に少しとがった場所が見えるが、これは成長した気に隠れているだけで、ストリートビューで、この場所から前進して眺めてみれば同じだとわかる。
上の写真では道路の右側にガードレールが見えるがここに落差のある水路があるために、転落防止用に設けられたもののだろう。水路は道路に沿って作られており、映画に見られる水車はこの水路を使ったものだ。
さていよいよストリートビューだ。
この道路を進んでいくとやがて分岐に差し掛かる。直進する道路は細くなっており、こちらが踊子歩道とされいている。というのもこちらが旧道で、島崎藤村の文学碑があったりする。右側は映画撮影当時にはすでにできていた当時の新道になる。それを知らず、旧道が当時の撮影に使われたのではないかとトコトコと旧道を歩いて行った。雰囲気はいかにもという感じで、ここで撮られたのではと推測してみたりしたが外れた。
映画はここを右折してすぐの場所でも撮影されているのだが、長くなるのでここでやめておこう。
続く
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